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健康な体を作る運動

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立つためのリハビリテーション

有名なアメリカの映画「スーパーマン」の主役クリストファー・リーブは落馬事故による脊髄損傷でほぼ完全麻痺となってしまいました。残念ながらすでにこの世を去っていますが、そのリハビリテーションの中で「立位保持運動」が採用されていたことが、「脳から見たリハビリ治療 久保田競/宮井一郎共著 講談社, 2005」で紹介されています。

「……さらに、台立ちも行いました。足でからだを支え、骨密度を増すためのものです。膝、腰、胸を紐で板に留め、立位をとらせます。こうすれば、バランスさえとれれば直立することができます。これは三週間の訓練で直立できるようになりました」(同書P23)

最後に「直立できるようになりました」とありますので、立つための(カラダを支えるための)筋力もついたのでしょう。

自力で立てないことには自力では歩けませんので、この「自分の力で立てる」という機能回復は、歩行リハビリテーションの第一歩として非常に重要なステージとなるんですね。

抗重力筋

犬のウォーターセラピーを考える その2」でも触れられていますが、運動に関する筋肉の働きには2種類あり、立つための(腰砕けにならないための)筋力を発揮する筋肉を「抗重力筋」と称します。つまり、抗重力筋というのは特定の筋肉を指しているわけではなく、地球の重力に対して姿勢を保持するために働く筋肉全般を総称しています。この筋肉群が収縮せず(力が入らず)弛緩したままだと、ヒトもイヌも自力で立ち続けることなどできないわけです。

では、どうやれば、その抗重力筋としての筋肉の機能を回復させることができるのでしょうか?

アイソメトリックトレーニング

抗重力筋を鍛えるトレーニング法は、アイソメトリックトレーニング(等尺性収縮運動)」と言われる、動きを伴わない状態で筋収縮を引き起こすトレーニング法です。静止のまま筋肉が力を出している状態を維持しますので、外見からは運動しているようには見えません。それでも、筋肉には強い電気信号が流れ、強大な運動効果を与えているのです。このトレーニング法で鍛えられた筋肉は、カラダが勝手に動いたり弛緩したりするのを防ぎ、ちゃんと立っていられるようにしてくれます。合掌で手と手を合わせて両側から力いっぱい押す形をイメージをしてみてください。腕は動いていませんが、力は発生して筋力を使っています。こんなトレーニング法をアイソメトリックトレーニングといいます。

ボールホールディング

クリストファー・リーブのリハビリでは、板にはりつけたまま立位をとらせる方法が試みられていますが、イヌの歩行リハビリでは、上からタオルやハーネスで吊り上げたり、四肢の間でバランスボールを抱え込ませたりして免荷(体重を支えること)し、立位をとらせる方法が使われています。この状態であれば、自重を、すべてではありませんが、支えながら立つことができます。そして少しずつ免荷量を減らす(荷重を増やす)ことで、筋肉への負荷を強めていくのです。

余談となりますが、立位保持した状態で少しずつ左右にカラダを揺らしてやると、プロプリオセプション機能を刺激することで、神経再生も期待できるとされています。また、寝たきりのヒトやイヌにとっては、この立位を保つ運動こそが、立っていた時の記憶を引き出すことにもつながるのです。

大切な健康を守る

ヒトでもイヌでも、健康は、親や配偶者と並んで、失ってはじめてその大切さがわかるものの最右翼と言われています。健常者にとっては、ただ立たせるだけのことを「運動」と呼ぶのに違和感を感じるかもしれませんが、歩行困難はヒトやイヌにとっては、この立位保持運動による抗重力筋強化というトレーニングが、その健康を維持するためのすごく大切な作業であることは間違いないのです。立てない子には、つまらないと思わずに、時間をかけて立たせる運動もやらせて欲しいと思います。

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