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変性性脊髄症

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随意筋の不随意運動

カラダを意識的に動かす時は、脳からカラダにつながる神経システムがその指令を伝達します。そうやって自分の意志で動かす筋肉を「随意筋」と言います。腕や足など運動器を動かす骨格筋と呼ばれる筋肉群のことですね。一方、意識しなくてもちゃんと動いている筋肉もあります。「不随意筋」と呼ばれる心臓や血管などを動かす筋肉です。常に決まった動きをしているものですから、脳の省エネにもなりますし、何よりも自在にコントロールすべきものでもないのでしょう。

随意筋を動かす時、基本的には、動かそうと意識するのは「脳」、動くのは「筋肉」ですので、随意筋は脳の指示で動くということになります。しかし、その本来随意筋であるはずの筋肉が、脳ではなく脊髄の指示で動く、つまり意識せずに筋肉が動く、そんな運動もあるのです。ヒザをたたくと足が前に出る「伸張反射」などの反射運動と呼ばれる運動はよく知られていますが、いわゆる「随意筋の不随意運動」というものです。

パターン化されたリズム運動

今回は、随意筋を不随意に動かす運動の内、反射運動ではなく「CPGによる運動」という普段聞きなれない運動について説明します。

1911年、除脳(脳を切り取った)ネコの実験により、屈筋と伸筋の興奮を交互に引き起こすシステムが脊髄内に存在するという仮説が発表されました。そのネコは脳幹上部で脳を切断し、脳からの指令が筋肉まで届かない状態であるにも関わらず、トレッドミルに乗せ脳幹の特定部位に電気刺激を与えたところ、リズミカルな歩行を始めたのです。その後、リズム運動を誘発する脊髄内のイオン機構や神経ネットワークの解明が進み、この神経回路はCPG(Central Pattern Generator)と称されるようになりました。

一度歩き始めれば、「次は右足を出して、左足を出して……」といちいち考えなくてもリズミカルに歩行を続けることができますよね。だから、私たちは”どちらの足にどれくらい力を入れて動かすか”などといった意識にとらわれることなく、犬との散歩も楽しめますし、友達と話しながら目的地まで移動することもできるわけです。これは、パターン化されたリズム運動を誘発するCPGが機能しているからなんですね。このCPGによるシステム化のおかげで不随意かつ円滑に歩けるということは、裏を返せば、歩行困難に陥った時は歩くことに大きなストレスがかかるということなのでしょう。CPG機能って、その存在を意識することはできませんけど、すごく大切でありがたいものなんですね。

CPG機能再生は歩行リハビリの入り口

ヒトのニューロ(神経)リハビリテーションでは、「動かしたい」という意思を発する脳の作業と実際に運動器を動かす作業を同時に行い、「動いた」という感覚を脳にフィードバックすることで、神経機能を回復できる、とされています(iBF仮説)。この理論に基づいて開発されたHALというリハビリ用ロボットで、再歩行には至らずとも、ヒトのALS(筋萎縮性側索硬化症)の症状が改善したという臨床結果も出たと聞いています。ただ、残念ながらイヌのDM症状が改善したという話は聞いたこともありませんし、イヌ用のロボットが開発されるとしてもはるか先の話なのでしょう。でも、水中サイクル運動やトレッドミル歩行により脊髄のCPGを活性化させることが再歩行の入り口となる、というヒトの歩行リハビリの機序は、イヌにとっても効果的な手段だと信じたいですし、DM犬が自律的で協調的な歩行を取り戻すための効果的な手段であって欲しいとも思うのです。

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