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へスペリジンとナリルチン

最近、何かと話題の「ヘスペリジン」。温州みかんなど柑橘類の果実の皮を乾燥させた「陳皮(ちんぴ)」なる漢方薬の有効成分です。陳皮を使った漢方薬としては「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」が有名ですよね。ヘスペリジンは、柑橘類、特にそのスジや皮に多く含まれているフラボノイド(ポリフェノール)で、さすがに皮を食べろとは話しておりませんでしたが、中にある「スジ」も一緒に食べた方がヘスペリジンの効果を大いに享受できる……と、テレビ番組(テレビ朝日「林修の今でしょ!講座 2019/12/10)で長崎県立大学の田中一成先生がご説明されていました。

このヘスペリジンに中枢神経の機能を回復する効果があることがわかり、今、いくつもの研究所でその研究が進んでいます。

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柑橘類の皮やスジには、当然のことながら、ヘスペリジン以外にも多くの成分が含まれています。柑橘類の中でも温州ミカンにはヘスペリジンが多く含まれているのですが、もう一つ神経回復に有効と考えられるフラボノイド成分「ナリルチン」は「じゃばら」という柑橘類に多く含まれていることがわかり、そのじゃばらも注目されています。このヘスペリジンとナリルチンのW効果で神経機能が回復するという機序が明らかになりつつあります。

ちなみに、ヘスペリジンとナリルチンは、紫外線から果実を守るために含有されるポリフェノールの仲間で、完熟したものよりも未完熟の青い果実により多く含まれており、ヨーロッパでは、その有効成分が血管系疾患、リウマチ・関節疾患の医薬品製剤として使われるなど、薬効が高く評価され、役立てられてきました。

ミエリン(髄鞘)

さて、話は変わって、神経の話です。脳や脊髄といった中枢神経にあるグリア細胞の一種「オリゴデンドロサイト」はニューロンの軸索に巻き付いてミエリン(下図の赤い丸の部分)を形成します。末梢神経ではオリゴデンドロサイトではなく「シュワン細胞」というグリア細胞がミエリンを形成します。ミエリンのおかげで神経の電気信号の伝達速度が上がるのですが、このミエリンが壊れたまま新たに形成されないとそこの神経細胞の機能も壊れてしまいます。そのミエリンが壊れて戻らなくなってしまった症状を「脱髄」と言います。

先天性ミエリン形成不全は子供の精神遅滞(知的障害)を引き起こし、一方、晩年の脱髄は認知機能の低下をもたらすと考えられています。

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脱髄と再ミエリン化

神経細胞も細胞ですので新陳代謝を繰り返しています。ミエリンも、いわば脱髄と再ミエリン化(再髄鞘化)を繰り返しているようなものです。オリゴデンドロサイトが再ミエリン化でミエリンとなるためには、オリゴデンドロサイトという細胞になる直前の細胞であるOPC(オリゴデンドロサイト前駆細胞)の分化・成熟が不可欠なのですが、ヘスペリジンとナリルチンはOPCからオリゴデンドロサイトへの分化に関与していると考えられているのです。オリゴデンドロサイトが子どもから大人に成長するための栄養といったところですかね。

その機序の詳細はまたの機会にご説明します。

ニューロアクト

岐阜大学動物病院神経科のサイトにも、ヘスペリジンを含む「ニューロアクト(日本全薬工業)」というサプリメントのDM進行抑制効果への期待が記載されています。

今のところ、ヘスペリジンとナリルチンの効果に関する研究は、加齢に伴う脱髄症状の、しかも脳の脱髄症状の「再ミエリン化」の研究にとどまっているようですが、脱髄の進行抑制どころか脊髄の神経の「再ミエリン化」によりDM犬の脊髄が元に戻った!……なんてことになれば嬉しいですね。

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